
大前研一 デジタルネイティブ人材の育て方
内容紹介
21世紀に企業が求める人材の特徴は、ひとことで言えば、スマートフォンが全世界に普及したことを前提にビジネスを構築できる人ということになる(大前研一)。大前研一氏が考える「21世紀に必要な人材」とは一体どんなものか。他に、日産自動車前副会長の志賀俊之氏、サイバーエージェント執行役員の曽山哲人氏、インド工科大学学長のウダイ・B・デサイ氏が登場。この1冊でこれからのビジネスで活躍できる「人材」のカタチがわかる。
【著者より】
はじめに
二一世紀の人材戦略は、二〇世紀とはまったく異なります。それは、少子高齢化による国内市場の縮小、欧米や新興国企業との競争の激化、破壊的イノベーションを容易に起こすことのできるスマートフォンなどのテクノロジーの登場など、ビジネス環境が大きく変化しているからです。
それなのに、日本企業をみてみると、いまだに二〇世紀型の人材戦略のままのところがほとんどではないでしょうか。たとえば、多くの企業で行われている新卒一括採用。これは、高度経済成長期に製造業が大量の労働力を確保するのには適していましたが、このようなやり方で二一世紀に活躍できる「グローバル人材」「イノベーター」「リーダー」を効率よく採用することはできないのです。
また、安倍晋三首相には申し訳ありませんが、正規社員を内部に抱え込むことも、時代に逆行しているといわざるを得ません。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)やクラウドソーシングを上手に利用すれば、人材コストは大幅に抑えられます。
企業が勝ち残れるか否か、カギを握るのは人材戦略です。それには二一世紀の人材戦略とはどのようなものなのかを正確に理解しておく必要があります。
グローバル、イノベーター、ダイバーシティが重要で、さらにいうとデジタルに精通する人材をいかに確保・育成できるかが、企業の成長のカギを握るでしょう。
たとえば、日産自動車は、カルロス・ゴーン氏が来てから、以前とまったく違う組織に変わりました。今、一番力を入れているのは、新しい人事制度で、それは世界中から優秀な人材を集めるための仕組みでもあります。
サイバーエージェントは、スマートフォン市場の拡大をいちはやく予測してデジタルネイティブの経営者を育てることで大きく成長を遂げています。
インドの名門校、インド工科大学を卒業した人材は、一四〇万人の受験者に対して合格者は一万人程度(合格率〇・七%)という超エリートで、英語ができてITに精通していることから、今や世界で引く手あまたの状態です。
本書は解説だけでなく、このように実際に二一世紀型人材戦略で経営を行っている企業の具体的事例も網羅しているので、実践の手助けにもなるはずです。
ひとつでも多くの企業が人事戦略を二一世紀型に転換し、成長の糧とすることを願ってやみません。
大前研一